茅屋雑記帳

ボンクラ主婦きすけの気ままな日記

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手ぶくろを買いに

新美南吉の作品である。
晩秋の冷えに手荒れが一層ひどくなり、
「そういや、私の手袋、ずいぶん毛玉が目立ってきてたし、早めに新調しとこうかな」
などとぼんやりひとりごちていたら、唐突に浮かんできた。

          ・・・・・・・・・・・・・・     あらすじ     ・・・・・・・・・・・・・・
雪の朝、表を走り回って帰ってきた子狐の冷え切った手を握りながら、母さん狐は手袋を買ってやろうと思いついた。夜になって町に出かける途中で、母さん狐は子狐の片手を握って人間の子供の手に変えた。そして子狐に、町の帽子屋へ行って戸を少しだけ開けたら、人間の方の手を出して「手袋をください」と言うように、と教えた。間違って狐の手を出してしまうとひどい目に遭うからと。子狐は町に着くと帽子屋を見つけ戸を叩いた。帽子屋が戸を開けた拍子に差し込んだ光がまぶしくて、子狐はつい狐の方の手を出して、「手袋をください」と言ってしまった。帽子屋は、狐だなと思ったけれども出されたお金が本物であることを確認すると黙って手袋を渡してやった。帰り道、家の中から聞こえる子守歌を聴きながら帰った子狐は母さん狐に「人間ってちっとも恐かない」と、間違った手を出したけれど帽子屋は手袋を売ってくれたことを話した。母さん狐はあきれながら、「ほんとうに人間はいいものかしら」とつぶやいて物語は終わる。
         ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
                     フリー百科事典Wikipedia 『手袋を買いに』の項
                             (2012720 () 06:19 更新)より引用

うちにも柔らかで繊細な美しい絵により表現された児童書『手ぶくろを買いに』(偕成社)があり、
伜の幼い頃、何度か読んでやった。
だが、ラストの、
「ほんとうに人間はいいものかしら」
という母さん狐の呟きをどのような声音、調子で伝えればよいのか、いつも少し困った。
私自身、この静かに様々な含みを残す作品の解釈をあれこれ考えさせられていたからだろう。
本棚の隅から引っ張り出して再び読み返した現在もやはり同じだ。

まあ伜は、『しょうぼうじどうしゃじぶた』、『もりたろうさんのじどうしゃ』、『のろまなローラー』等、
車や電車・飛行機他乗り物関係、または『すてきな三にんぐみ』のような盗賊関係()といった、
いかにもおとこぼうずらしい本ばかりを好んで繰り返しせがみ、この『手ぶくろを買いに』には、
さほど特別な反応を示さなかったのだが。

余談乍ら、『泣いた赤おに』を読んでやったときは、小さな肩を震わせてひっくひっくしゃくり上げ、
その夜はなかなか寝ついてくれなかった。
そして、二度と、読んでほしい、とは言わなかった。
ただ、少し大きくなってからは、ときどき自分で読んでいたようだ。


さて。
『手ぶくろを買いに』で、もうひとつ思い出したことがある。
遠い昔、私は、物を失くしたり落としたりってのも間々な、ぽっかりした子どもだった。
中でも多かったのが、手袋。
せっかく新しく買ってもらっても、いつの間にか片方だけ失くなっているのだ。
そこで母親は、毛糸を縒った長い紐で両方をつなぎ、首からかけたままはめられるよう、
対策を立てた。

ところが何たる粗忽者、今度はそのまま両方いっぺんに失くしてしまったのである。
あちこち探しまわり、暗くなってからべそをかきつつ家に帰ると、遅いのを心配していたのか、
片方の際には小言を言った母親が、
「手袋はきっとあんたの身代わりになってくれとるんだわ」
怒りもせず真顔で言う。
ほっとすると同時にわんわん泣いてその場にしゃがみ込んだ。


「ほんとうに人間はいいものかしら」
どうだろう…よくわからない。
だが、脳裏には、いいものだと思える温かな記憶がいくつも刻まれている、と答えたい。

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コメント


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手袋を買いに

きすけさん、こんばんは。
ときおり拝見するたびに、胸の奥に小さな灯火がともるような気分になります。
人や物に対する鋭い観察眼が縦糸で、洒脱な表現が横糸となって彩っているのだけど、なんと言っても芯地にあるのは、ご家族に対する深い愛情なんだなあ、ふつうに素敵な人たちの集まりを見るのは心地よいな、と思います。

今回もラスト3行が圧巻。

手袋が身代わりにと言ってくださったお母様。たまに帰る息子さんのために冬瓜を煮付けるきすけさん。
ウチにも同じ歳の息子がいますが、私は母から受けた何を彼に伝えられているだろう。自分がこれまで生きてきた年月を振り返りました。


ちょっとわがままな読者心理というか老婆心ですが、

最近載せられるようになったプロフィール画像は、‘「ボンクラ主婦」にして最高のエッセイスト’のイメージにしては、あまりにはかなげに美し過ぎます。身体の随所に懸念だらけの同世代としては、黒いドレスにもドキッとします。

どうでしょう、この際戯れに、サザエさんとかジャイアンのお母さんみたいな、元気印の画像を載せるというのは?


少し気が早いですが、健やかな年を迎えられますよう、お祈りしております。




山猫 | URL | 2012-11-23(Fri)02:37 [編集]


山猫さん

こんにちは、コメント、ありがとうございます。

その日そのときに浮かんだ思いをちまちま書き留めているだけの独り言ブログ、お恥ずかしい限りです。

なお、身バレしない程度にガラス加工をかけてごまかしていますが、プロフィールの画像は黒いドレスなどでなく近所のスーパーにて購入した廉価なプリントTシャツを着用しております(汗)。

きすけ | URL | 2012-11-23(Fri)09:54 [編集]


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