茅屋雑記帳

ボンクラ主婦きすけの気ままな日記

気品

もう十年近く前のことだったと思う。
駅前の喫茶店で一人お茶していたら、お子さん連れのおかあさんが隣のテーブルにつかれた。

たぶん四、五歳くらいのお嬢ちゃん、肩にかかる程の髪をとても気に入っている様子で、
「こないだおばあちゃんに買うてもうたリボンで結んでって言うたのに」
ちっちゃく駄々をこねてはいるが、そのおしゃまさも可愛い、行儀のいい子。
おかあさんも静かに笑んでらして、何だかこちらまで和やかな気持ちになる母娘だ。

勿論、つぶさに観察していたわけではない。
窓の景色を眺めたりしつつ、見るともなく、である。
だが、おかあさんの或る所作に、目が吸い寄せられてしまった。

お嬢ちゃんの襟元に糸屑がついていたようで、そっとつまんだおかあさん。
小さな糸屑など、大抵は意識すらせず、床へ払ってしまうのではなかろうか。
なのに、彼女は、御自身のブラウスの胸ポケットへ入れたのだ、それも、ごく自然に。
何でもないようで、なかなかできることではない。

ほんの一瞬の所作に、香り立つ気品。
ぼぉーっとするほど心奪われた、ひとこまであった。

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