茅屋雑記帳

ボンクラ主婦きすけの気ままな日記

人よりいづるもの

昔話ってのは、結構えげつない。
日本、海外、いずれの昔話も童話の範疇に収められてい、部分的に削除・改変してあるので、
かなりソフトなものに触れてきたわけなのだが、それでもなお、そこはかとなく漂う不気味さに、
幼心をどんよりさせられることも多かった。

近頃、思い出されてならない一編がある。
確か『ほうせきひめ』という題名だったと記憶しているが、何ぶん四十年ほども前のことゆえ、
あらすじを書き出そうとしても曖昧。
幸い『福娘童話集』さんというリンクフリーの素晴らしいサイトに詳しくまとめられていたので、
恐れながら拝借する。(http://hukumusume.com/douwa/pc/world/08/31.htm)

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                         『仙女』

むかしむかし、お母さんと二人の娘が、村はずれの貧しい家にひっそりと暮らしていました。
 お母さんは自分ににているお姉さんばかり可愛がり、下の妹には家の用事や力仕事をさせていました。
 でも妹は嫌(いや)な顔をせず、洗濯(せんたく)も料理も掃除(そうじ)も、歌を歌いながら楽しくやっていました。
 
 ある寒い寒い日の事です。
 お母さんは妹に、井戸へ水をくみに行くように言いつけました。
 妹はおけにひしゃくを入れて、村の井戸へ行きました。
 すると井戸のそばに、ボロボロの服を着た女の人が立っていました。
 髪の毛も顔も汚れていて、ほっぺたはやせこけています。
 女の人は妹が水くみをはじめると、声をかけてきました。
「すみませんが、お水を一杯、飲ませてもらえませんか?」
「ええ、いいですよ」
 妹はニッコリ笑って、おけに浮かんだゴミを全部取ると、きれいな水だけをひしゃくにくんで渡しました。
「さあ、何杯でもどうぞ」
 女の人は喜んで、おいしそうにひしゃくの水を飲みました。
 それから妹にひしゃくを返すと、こう言いました。
「あなたは、なんて優しい娘なのでしょう。これから先、あなたが話せばバラの花と宝石が口から飛び出すようにしてあげましょう」
「まあ、ありがとう」
 妹が言うと、ピンク色のバラの花と真珠(しんじゅ)が、ポロリと口から飛び出しました。
「すてき。ありがとうございます」
 妹はポロリポロリと出てくるバラの花と宝石を集めてエプロンのポケットにしまうと、女の人にお礼を言って家に帰りました。
 家に帰った妹はバラの花と宝石を見せて、お母さんと姉さんに井戸で会った女の人の事を話しました。
 そう話している間にも、赤や白のバラの花とルビーやダイヤモンドがポロポロとこぼれました。
 お母さんとお姉さんは、あわててその宝石をひろいました。
 そしてお姉さんは、
「あたしも、バラや宝石が出るようにしてもらうわ」
と、おけとひしゃくを持って井戸へ走って行きました。

 井戸のそばにはさっきの女の人が立っていて、姉さんに言いました。
「すみませんが、お水を一杯、飲ませてもらえませんか?」
 ところがお姉さんは、花や宝石を出してくれる仙女(せんにょ)は、きっと美しい貴婦人(きふじん)のような女の人にちがいないと勝手に思い込んでいたのです。
 だから、ボロボロの服を着た女の人にそう言われたとたん、
「汚らしい! お前なんか、あっちへお行き!」
と、ひしゃくで水をすくって、女の人の顔にひっかけたのです。
 すると女の人は、お姉さんをにらみながら言いました。
「あなたは、なんて意地悪な娘でしょう。これから先、あなたが話せば毛虫や毒(どく)虫が口から飛び出すようにしてあげましょう」
 そしてそのとたん、女の人は消えてしまいました。
「ちょっと、毛虫や毒虫って、どういう意味!」
 お姉さんがあわてて言うと、口から本当に毛虫や毒虫がポロポロと飛び出してきたのです。
「キャーー!」
 お姉さんは泣きながら家に帰り、お母さんに言いつけました。
 その間も毛虫や毒虫が口から飛び出て、部屋中をゴソゴソ歩きまわります。
 お母さんは妹をにらみつけると、
「姉さんに、ウソを教えたね! 仙女がみすぼらしい女だなんて、言わなかったじゃないか! お前なんて、出てお行き!」
と、妹を家から追い出しました。
 追い出された妹は、ションボリと森へ行きました。
 そこへお城の王子さまが、馬に乗って通りかかりました。
「娘さん、泣いたりして、どうしたのですか?」
 妹は泣きながら、お母さんの家を出てきた事を話しました、
 そう話す妹の口から、バラの花と宝石がポロポロとこぼれます。
 それを見た王子さまは妹のことが好きになって、妹をお城に連れて帰りました。
  妹はやさしくて働き者でしたから、王さまにも大変気に入られて、王子さまと結婚してお妃(きさき)さまになったのです。


(
『福娘童話集』さんより抜粋)

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かつて私の読んだ本には、女の子の口からムカデやヘビやカエル等が飛び出している、
リアルチックな挿絵まで御丁寧に入れられており、
「うわあ、こんなふうになってしまったらどうしよう…」
寒気を催したものだ。


あと一年ちょっとで五十路、ようやくしみじみわかるようになった。
パチモンにすらなれぬ人間が吐く言葉は、やっぱり醜く変質するのだなあ、と。

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