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茅屋雑記帳

ボンクラ主婦きすけの気ままな日記

第一声

もう十年以上も前のことだが。
右脚に沸きたての湯をかぶり、大腿部から膝のお皿まで熱傷を負った。
完全に自身の過失、しかも最初の処置その他が遅れ、結局入院して手術を受けることに。
粗忽な奴である。

手術は、自分の左大腿部から皮膚を切り取り、右脚患部に移植するというもの。
全身麻酔だったんで、グースカ寝ているうちに終わった。

意識が戻り、おっさんと伜にこんなことを言ったそうだ。

「今頃脚の皮膚も、
 『あれ、なんでおれ、こっち側に来とんの?』
 ってビックリしとるやろね」

彼らの顔を見たときには、わりとはっきり目が覚めていたように思うのだが、記憶にはない。
術後の経過は順調、それから二十日ほどで退院できた。

数年後、伜が中学生になってから、晩の食卓でそのことが話題に上り…。
恥ずかしながら、私は、初めて知った、そんな自分の言を。

伜は、
「人にさんざん心配かけといて何ふざけとんのやろ、て、ほんと呆れたわ」
当時のあれこれを思い出したかのようなしかめっ面。

一方、おっさんは、
「え、そうか?
 おまえがまだ小さかったよって、不安がらせんように言うたんやなあ。
 こんなときでもさすがに母親やなあ。
 て、儂は感心したんやけど」
凄まじく美しい解釈。

どちらでもない、おそらくその瞬間のマジな気持ちをひょいと口にしただけのことであろう、と、
本人は思った。

そして、私の脚の皮膚が男なのは何故なんだろう、と、首を傾げた。

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