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茅屋雑記帳

ボンクラ主婦きすけの気ままな日記

まさちゃん

先月、伜が帰省した際、奴のケータイを横からひょいと覗き、胸が詰まった。
待ち受け画面にいたのは、白いねこ。
「今でも変えてへんのやなあ…」
口には出さなかったけど、ひどく切なくなった。


伜が中学二年生だった夏。
マンションの敷地内に、一匹ののらねこが現れるようになった。
どこでどうしたものやら左眼が潰れてしまっているが、学校や塾へ出かけ、また帰る朝夕晩、
必ず足元にすりすりじゃれついてくるらしく、
「たまらん…」
と言う。

左右逆ながら、伜はこの隻眼の白いねこを『政宗』と呼んだ。
そして、その呼び名は、親しくなるにつれ、『まさちゃん』へと変わった。
私も、表へ出る度、まさちゃんの人懐っこい挨拶を受け、何だか気持ちがまあるーくなった。

そんな可愛い子だったが、ねこ嫌いの人には植え込みの陰で寝ているだけでも目障りらしい。
ちょうどその頃マンションの総会が開かれ、
「保健所に引き取ってもらおう」
てな話になってしまったときには、どうしよう、と、血の気が引いた。
平然と飼ってる人もいっぱいいてるけど、原則ペット禁止のマンション。
また、伜&私のアレルギー(喘息)の問題もあり、いくら好きでもうちでは飼ってやれない。
食ったものをリバースするほど、胃が痛くなった。

そう。
六年前の九月のはじめ、総会から帰った夜。
雷鳴轟く中、私たちは、玄関前のベンチの下で竦んでいたあの子をつかまえ、クルマに乗せた。
たくさんののらねこが集うユートピアだと聞いていた隣県の尼寺へ連れて行こう、と。
ただただ命を助けたい一心だった。
世間様の迷惑を顧みる余裕もなかった。

そしてね。
そして、でもね。
思った。
私たちは、捨てたのである。
捨てに行ったのである、まさちゃんを。
この事実は、どうしたってごまかせない。
私たちは、捨てたのである。
捨てに行ったのである、まさちゃんを。

雨の中、尼寺の門前にあの子を降ろし、
「まさちゃん、ごめんな、ごめんな、ごめんな…」
伜は、何度も何度もそう繰り返し、何度も何度も振り返った。
そして、帰りのクルマの中で、号泣した。
「まさちゃん、まさちゃん、まさちゃーーーーーん!」
おんおん、おんおん、叫び続けた。


伜よ。
おとんに買うてもうたばかりのケータイで、初めて撮った被写体も、まさちゃんだったね。

政宗 

そしてね。
そして、でもね。
思う。
私たちは、捨てたのである。
捨てに行ったのである、まさちゃんを。
この事実は、どうしたってごまかせない。

そうだね、何年経ってもごまかせないね。

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コメント


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この手の文章はたまりませんな。

僕も小学生の時、どしゃ降りのなか拾ってきた、目も開いていない仔猫五匹を親に捨てられてしまいました。

子供ながらに野良猫がどれほど過酷な生を送るかは分かっていたので、
「なんでもいい。なんでもいいから、とにかく生きのびてくれ・・・」と祈り続けました。

今でも忘れられません。

りょう | URL | 2010-12-04(Sat)01:17 [編集]


りょうさん

こんにちは、コメントありがとうございます。

>「なんでもいい。なんでもいいから、とにかく生きのびてくれ・・・」と祈り続けました。

きっととてもとても胸が苦しくなってしまう祈りだったのでしょうね。
ああ、だめだ、朝から…。

忘れようにも忘れられぬまさちゃんですが、私は私のしたことも絶対にごまかしちゃいけないと思っています、自分の中で。

きすけ | URL | 2010-12-04(Sat)10:08 [編集]