茅屋雑記帳

ボンクラ主婦きすけの気ままな日記

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まぼろし

小学校高学年の頃。
かぐや姫の『神田川』に代表される、所謂同棲ソングというのが流行った。

何ゆえか眠れずに布団の中で買って貰ったばかりの携帯ラジオを聴いていた或る夜、
同じかぐや姫の『赤ちょうちん』が新曲として紹介された。
しんと耳を澄ましていたが、後半部になってだんだんしゃくり上げ、最後には大泣き。
以下の部分である。


   『 あなたと別れた雨の夜 公衆電話の箱の中
      膝を抱えて 泣きました
        生きてることはただそれだけで 哀しいことだと知りました 

     今でもときどき雨の夜 赤ちょうちんも濡れている
       屋台にあなたが いるよな気がします
        背中丸めてサンダルはいて 独りでいるよな気がします  

そして…

ウェイトレスの“私”は、作家志望の文学青年と一緒に暮らしている。

彼は定職に就かず、ペンを持つのが相応しい長い指で時折日雇仕事をする。
キャベツと夢を齧り、こんな暮らしがいつまでも続くわけはないという予感に怯えつつ、
抱き合いまた傷つけ合う。
やがて訪れた別れ。
哀しみを知る大人になった“私”は今独り思う。
不器用だったあなたもやはり独りでいるのではないか。
いや、“私”の中ではいつまでも独りだ、二度と会えないあなたは。

…とまあ、ヒロインになりきりヲイヲイな物語を勝手に作っていたら余計眠れなくなった。
昼間には、青い空、白い雲、わたしの彼は左きき、と晴れやかな夢想をしていたのが、
一夜にして青春の終わりに立ち会ってしまったのである。
私が特別ませていたわけでは決してない。
(TVっ子・漫画っ子の常で変な方向にばかり頭でっかちなきらいはあったが)

この曲が平凡な小六女子さえ背伸びした感情移入に走らせる吸引力を持っていたのだ。

それでも上記の妄想を友だちに話したことは一度もなかった。
そのまま数ヶ月経ち中学に入ると、掌を返したようにがらり趣の異なるユーミンの虜に。
確かに『神田川』も『赤ちょうちん』も胸がきりきりと痛むような感動を与える。
が、同時に、大きな声で好きと言うのを躊躇させるしみったれた湿気も帯びていた。

大体、『神田川』など、三畳一間の小さな下宿、とはっきり述べている。
そんな布団と本箱位しか置けぬ部屋で二人ぎゅう詰めになっている様子を想像すると、
何やら息苦しくて仕方ない、まず物理的に無理だろうと身も蓋もないことを考えてしまう。
いつしか廊下の突き当りにありそうな共同便所の概貌なんかももやもやと浮かんで来、
そこから立ちのぼるアンモニア臭が恋人達の部屋だけでなく私の元にまで漂ってくる。
ひとつ間違えばサルマタケとインキン治療薬の世界になりかねん状況ではないか。
それに、あっちでさえ四畳半あるよな。


一方、ユーミンの曲はどれもリッチでファッショナブルな香りがした。
また、言いたいけど上手く言えない女のコの気持ってやつを胸の中からするりと取り出し、
これ以上的確な表現はないとうれしくなるほど鮮やかな言葉で代弁してくれた。
私のユーミン好きは二十代半ばまで続いたが、かぐや姫を聴き返すことは殆どなかった。

で、ババアになった現在。
『神田川』、『赤ちょうちん』、いずれもやはり名曲であると思う。
だが、まぼろしを映し出したおとぎ話として聴いている。
『神田川』のヒロインも言う。

   『 若かったあの頃 何もこわくなかった
       ただあなたのやさしさが こわかった  』

そう、いつまでも続くわけはないという予感と重奏する恋もまぼろしなのだ。
だからこその美しさに人は涙し、時を経た今もなおふと口ずさむのだろう。

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コメント


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ユーミンいいですね。ユーミンがわかる僕は女心がわかる男なのでしょうか(笑)

コンサートに行った時、アンコールで「青いエアメイル」を聞いて、この曲の歌詞の凄さを再認識しました。♪時の流れに負けないの~ なんて、やばすぎます。

東京都西部、渋谷から用賀とか二子玉川あたりから、東名高速・中央高速のある神奈川県北部、御殿場から富士山にかけてドライブしていると、カーステレオにはユーミンが流れてないのに、ユーミンの音楽が幻聴として聞こえてきます。

ちなみに神奈川県南部はサザンですが(笑)

猫ギター | URL | 2008-10-19(Sun)23:45 [編集]


猫ギター先生

『青いエアメイル』とはまたズキューンな曲を挙げて下さいますね!
もたれかかるようなべたつきがない清爽な恋心にやられてました。
ユーミンの曲って感傷で雪崩を起こさないというか、良い意味で自分の気持にこだわってい、失恋したときなんかに聴くとしゃっきりしたのを思い出します。
(と言いつつ、ぐっちゃぐちゃに感傷的な曲も結構好きだったりしたのですが)

>東京都西部、渋谷から用賀とか二子玉川あたりから、東名高速・中央高速のある神奈川県北部、御殿場から富士山にかけてドライブしていると、カーステレオにはユーミンが流れてないのに、ユーミンの音楽が幻聴として聞こえてきます。

私の場合はユーミンの曲によって見知らぬその風景をやたら美しく思い描き、憧れていました。
首都圏の流行りを意識した、わりと小洒落た辺りを走っているときなど、強引にユーミン気分に浸ろうと自分で編集したテープをかけ、頑張ったものです。
なのにその後入る喫茶店はコメダだったナゴヤンの青春(笑)。

きすけ | URL | 2008-10-20(Mon)09:31 [編集]


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