『♪さわやかになる、ひとーとき』の時代だったか、二十年近く前のコカ・コーラのCMで、
初めてコーラを口にする男の子のさまを描いた一編があった。
「どうだ?」
「うん、のどがシュワーッとしておいしい!」
いつしか青年になってしまった小橋賢児が演じる男の子の純粋な驚きや心はずみも、
周囲で見守っていた若者達の、これでお前もちょっぴり大人だぞ、てな快い先輩風も、
それこそ爽やかに伝わり、コーラの味を印象づける上手いCMだなあと感心したものだ。
私が初めてコーラを口にしたのは小学四年生のとき。
大学生だった叔母のデートに何故だかくっついて行ったボウリング場でのことだ。
その頃はまだ駄菓子屋にもコーラキャンディー等が出回っておらず、全く未知の味。
叔母も叔母の友だちだと挨拶したお兄さんも、飲めるかな、と笑って見ていたが、
鼻にツンと抜ける薬臭いような酸味は少しも嫌じゃなかった。
方々で響くピンの音や賑やかな歓声に混じり、ヒデとロザンナの『愛は傷つきやすく』が、
ゲームコーナーのジュークボックスから流れてきたのを憶えている。
そして、髪をカールさせると話し方まで変わる叔母を不思議に感じたことも、朧げに。
それ以来、家族で外出した際などにもしばしばコーラをねだるようになったが、
「子どものくせにおかしなものを欲しがって」
休み休みではありながら抵抗なく飲む私に、両親や祖父母は顔をしかめた。
今考えると、叔母は親達の目を欺くため私をデートに伴うという奇策を講じたのだろう。
当時は勿論その辺りの細かい機微などわからなかったが、家族がコーラをけなす度、
「あのお兄さんのことは黙っていたほうがいいな」
何となくそう思った。