古い話だが、当地の夏祭りの日のこと。
補習・塾夏講・部活・遊び・社交その他、やたらアクティブな生活を送るぼうずが、
「あんたって、友だちいてへんのか?」
唐突に訊く。
「へ、何で?」
「いや、顔知っとるカーサンたちがカタマリで歩いとんの、あっちゃこっちゃでよう見るし、
土曜とかだと“おかんが飲み会やで多少遅なってもええわ”て言う奴が結構おるけど、
あんたはいっつもテンション低く家におるみたいやなあ、思て」
ほぉ、“うざい”が口癖の高校男子でも視野の隅に母親を捉えていることがあるんか、
そう言や、『新選組!』でTシャツ姿のスタッフが映り込んじゃってたときには笑ったな、
…変に感心したり無関係な連想へ走ったりしながら、
「どやろ、友だちがいてるとかいてへんとか、いちいち考えたことないし」
のっそりテキトーな返事。
ぼうずもまた、
「ふーん、なんか孤独やな、んじゃ行ってくるわ」
あっさりそう言い、祭りへと出かけた。
野郎ばかりが集いさざめき屋台を冷やかし…相も変わらず汗臭いことよ。
イベントも最高潮かという頃に、激しい通り雨。
奴らはちゃんと雨宿りしとんのかいな、とそれこそテンション低く窓の外を眺めていたら、
「孤独ねぇ…」
ひと汽車乗り遅れたようにクスリと来た。
『日々是定休』のボンクラ主婦、無為な時間はたーっぷり。
が、それでも、孤独に陥る暇ってのは無かったんだよな。
好きな人と一緒になり、そのままずっと一緒にいる。
しかも、好きな人“々”と複数になってはらはらぶつぶつげらげらもそもそ暮らしている。
それ以上の充足を求めようったって、見つかりっこないじゃん、私には。
夏が終わり、秋も過ぎ、西の山脈に初冠雪を見た昨日。
ふとそんなことを思い出し、やっぱり同じ気持ちだなあ、などとひとりごちていた。
この先いつかぼうずが家を離れてゆく時には、
「おかげさんで、あたしゃいっつも退屈せずにいられたわい」
そう思うだろう、たぶん。
勿論、若い人がこのようにちんまりと内向きな考えでいるようじゃ問題だし、
たとえおばさんだって私みたいにものぐさなことを言ってちゃまずいんだろうが、
友だちだの理解者だのとまるで渇したように唱えている主婦を見る度、
「“ワタシの座席”なんて、そういくつもあるもんかい」
心中舌打ちしてしまうのである、ものぐさなくせに。