またまた『全員集合』関連のネタ。’70年代の終わり頃、私は高校生だった。そんな年齢ともなれば『全員集合』への興味も薄れてきそうなものだが、当時の高校生は案外喜んで観ていたように思う。実際、沢山のアイドルが登場し、馬鹿やったりするのが楽しかった。のちに“普通の女の子に戻りたい”と解散したキャンディーズも、現実には無論普通の女の子の生活などできなかったろうが、『全員集合』のレギュラーとして、高値の花のお人形さん風でなく、可愛いくせに面白いという普通の女の子的な魅力を振りまいていた。新御三家や中三トリオ(何年も忘れていた呼称だ)、沢田研二等々、ゲストたちもそれぞれに“意外と剽げた一面”てのを見せてくれたが、中でも特に好きだったのは桜田淳子である。志村けんとの新婚夫婦コントは傑作だった。サラリーマンらしき夫・志村の帰宅を嬉々として迎える新妻・淳子。が、いそいそした様子とは裏腹に、やることなすこと間が抜けている。「お風呂になさいますか、お食事になさいますか?」そう訊いておきながら、風呂との答えに対し、今から支度を始めるてな具合。「おいおい、何やってんだよ…」志村がたしなめると突然舞台が暗くなり、悲愴な音楽が流れる。「私って、駄目な女ね、あなたの妻にふさわしくないんだわ」ピンスポットライトの中でへたり込み、身も世もなく嘆く淳子。「わかったよ、言い過ぎたよ、俺が悪かったよ」慌ててなだめにかかる志村。淳:「でも、私のことなんか嫌いになったんでしょ?」志:「そんなことないよ(大汗)」淳:「じゃあ、私のこと、愛してる?」志:「ああ、愛してる、愛してるよ」淳:「本当?」すっくと立ち上がる淳子。再び照明が戻り、希望に満ちた明るい音楽が流れる。世界はなんて素晴らしいんだろうとでもいうように手を広げ、宣言。「淳子、負けない!」やれやれと脱力する志村。気を取り直して食事を望めば、風呂同様今から支度を始めるところ、ならばとビールを望めば、やはり今から冷やすという有様。その度毎に上記のどーんと暗くなったりぱーっと明るくなったりが繰り返され、最後は志村の「けん子、負けない!」という追い詰められたように自棄っぱちな台詞で幕となる。この懐かしいコント、実はしょっちゅう思い出す。新妻・淳子と同じようなことをやってる人間が結構いるからであろう。夫婦・恋人間だけでなく、親子兄弟、上司と部下、友人知人その他、どんな関係においても。やたら自分を責め、悲しみを強調することで相手にダメージを与える。で、結局は自分の思い通りに事を運び、“明るく健気な私”に戻る。あはは、単なるネット上のやりとりにおいてさえも時々見かけるではないか。 桜田淳子は表現力豊かで才能に溢れた人だった。独特の話し方・歌い方がわざとらしい、鼻につく、と嫌う向きもいたが、(殊に女性、山口百恵のほうがうんとウケが良かった)彼女が一流の芸能人であったことはこのコントからだけでも証明されよう。宗教に足を取られて姿を消してしまったのは返す返すも残念である。
Author:きすけ ボンクラ主婦。関西言語圏の地方都市在住。のんきなおとん・生意気な高校生の息子と三人暮らし。どうでもいいことをちんたらと書いていきます。
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